想い花をキミに
たしかに飲んでみればって挑発したのは私だけだけどね。
彼がその挑発にのるなんてこれっぽっちも思わなかったのに。

カップを握りしめて立ち尽くす私に振り返った彼が「置いてくよ?」と言いまた歩き出したから、ハッとしてその背中を追いかけた。
でもそのあとのデートはもう上の空って感じで、

「おーい、亜砂果?」

隼太がひらひらと私の前で片手を振っているけど、私の目に映るのはさっきの光景だけ。

隼太は普通なの?

そう思ってチラッと彼の方を見てみるけど、相変わらず片手をヒラヒラさせて私を不思議そうに見ているその顔からは戸惑いとか照れなんてのは微塵も感じられなくて、

「何でもないよ!」

と突然顔を上げて睨みだした私を見て、隼太はますますキョトンとした顔をしていた。
隼太が私の手を掴んだあの瞬間、心臓がドキッと音をたてたのは間違いないことで、今も私の鼓動はうるさいくらいに速く脈打っている。

全部、隼太のせいなんだから。
そう思うと彼を睨む瞳にいっそう力がこもる。
キョトンとしちゃって、ほんと悔しい。
私はこのデートが終わるまでずっと、そうやって隼太を睨んでいた。



























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