想い花をキミに
なんて言えばいいかも分からないまま、私は震える腕に力を込めた。
それだけできっと伝わるんじゃないかって思ったから。

そんな私の手に隼太の手が重なった。

その瞬間、心臓がドキンと大きく跳ね上がった。
だけどその手は私を受け入れることなく、そのままゆっくり私の腕をほどいていく。
ごめん、無理だ。彼の背中がそう語っているように思えた。
不意に、別れた時に私自信が彼の手を振り払った時のことを思い出した。

あの時の隼太もこんな気持ちだったの?
こんなに苦しかったの?

「ごめん。」

重い沈黙を破り口を開いた彼から出その言葉は、もう戻れないという事実を私に突き付けた。

「そう、だよね。こっちこそごめんね……」

隼太から離れると肩からかけていたタオルで顔を拭くふりをして覆った。

今更こうして彼の前に現れて、こんな風に気持ちを押し付けて、私、自分勝手だな。
そう思いながら必死でしたたり落ちてくる水滴を拭った。
だけど、全部は拭ききれなくて、前髪から滴る水滴が瞼にこぼれ、涙のように頬をつたう。
それは一滴、二滴じゃなくて何滴も。

私がふと、それが自分の涙であることに気が付いた。

泣く資格なんてないのに、
いつの間にかこちらを振り返っていた隼太が「泣かないでくれ。」って辛そうに言うからもっと泣きたくなった。

せっかく忘れかけていた胸の傷が更に深くなった。

隼太と別れた時に恋なんてしなければ良かったと思ったはずのに、私はまた自分で自分を傷つける道を選んでしまった。
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