想い花をキミに
隼太と再会して、何かが変わるかもしれないと思ったのは間違いで、期待していたのは私だけ。隼太は同じ気持ちじゃなかった。

一度終わったものは戻ってこないって事を思い知ったの。

別れてもなお優しい彼に甘えてしまっていた自分が恥ずかしく思えてきて、「帰るね」と言い残し、俯いたまま彼の部屋から走り去った。

外の雨はいっそう激しさを増していて、乾きかけていた私の洋服をまた湿らせていく。
溢れだす涙を振り払うかのように全力で走ったけど、雨か涙かなんて分からないくらいにもう全てがぐちゃぐちゃだった。
濡れて肌に張り付いてくる髪の毛も気にすることなく、私は傷ついた心のままにむせび泣いた。
やっぱり彼が好きだと認めてしまったことを、ひどく後悔しながら。


それからの日々はというもの、私は何をしていても憂鬱だった。

ふとした瞬間に泣きたい気分がこみ上げて来てどこにいても落ち着かなくてそわそわする。

「最近元気ないね。何かあったのかい。」

そんな暗い私の表情を見て、下宿先のおばちゃんが心配そうに尋ねてきた。

「そんなことないですよ。」と一生懸命笑顔を作ってみても、どこかぎこちなくて、すぐに「無理しなさんな。」と言われてしまった。

あの時の私の行動はほとんど衝動に近いものだった。
だから衝動って怖いんだ。
自分ひとりで勝手にいける、大丈夫だって思いこんじゃって、結局失敗して傷つく未来まで考えられなくなるんだから。

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