想い花をキミに
それからの日々はあっという間に過ぎていった。
気温もぐっと下がり、いよいよ雪も降りだしそうってところかな。

そうして気が付けば今年も残すところあと一週間。

「クリスマスイブか」

図書館からの帰り道を歩きながら、手袋をつけた両手をこすり合わせて呟いてみる。
街はクリスマス一色で恋人たちが幸せそうに微笑みながら歩いているけど、私は一人だった。
去年は専門学校の独り身の友達と過ごしてそれなりに楽しかったけど、今年は国家試験ということもあって、周りでクリスマスに浮かれている人はほとんどいない。

「いいなあ。みんな幸せそう。」

この時期に毎年思い出すのは、決まって17歳の冬、隼太と別れた時のこと。
あれから3年も経つというのに昨日のことのようにはっきりと浮かんでくるの。

「いけないいけない、また悲しくなってきた。」

最近は以前にも増して感情の起伏が激しくて困っちゃう。
高校の時は泣かないように強い女を意識していたけど、隼太に会ってそんな私も変わっていったの。

人に甘えられるようになったし、感情も表に出すようになった。
そういう面では人間らしくなってきたかなって思うけど、涙もろくなったのは年のせいもあるのかもしれない。

だってほら、人間誰しも年齢を重ねていくと優しくなるっていうでしょ?
それと同じ感じで私は涙もろくなってきたんだよきっと。

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