想い花をキミに
「隼太……」

名前を呼ばれ、その場に凍り付いたように立ち止まる私。

こんなところで会うはずないって思ってた人だから、驚きすぎてつい、持っていたケーキの箱を落としそうになった。
彼はいつからそこにいたのか分からないけど、耳を赤くしながら立っていた。

「どうして……」

「どうしてだと思う?」

戸惑う私の言葉を遮って彼が尋ねた。

分からないよ。どうして彼がここにいるのか、どうやってここを知ったのか。
混乱する私に彼が一言、「ごめん。」と言った。

あの時と同じ言葉。だけど今回は以前のような拒否的な言葉には聞こえなくて、思わず「え?」と聞き返した。

「本当はもっと早く会いにくるつもりだった。」

彼はゆっくりと近づいてきて、私の前で止まった。
そして悲しそうな、切なそうな、何とも言えない瞳で私を見つめたの。

「──誤解なんだ。あの日"ごめん"って言ったのは。亜砂果を受け入れられないって意味じゃなくって、今の俺じゃまだ亜砂果とやり直すわけにはいかないんだ。」

「どういうこと……?」

「俺にはまだ亜砂果を守るしっかりとした力がない。病院の後継者だけど経営に関してはまだ見習いだし、周囲を動かす力もない。だから亜砂果を狙って傷つけるやつらから守ってやれないんだ。」

「そんなの……」

自分の無力さを悔しがるように、彼は拳を握りしめた。
彼のその言葉に、傷ついた心がすっと軽くなっていくような気持ちがした。

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