想い花をキミに
あの日の誤解が解けていく、そんな気分。
傷つくことなんてもう怖くないって思えるの。

何かを決心したかのような表情の彼が続けた。

「でも俺は決めた。亜砂果を守るために一人前の経営者になるって。だからそれまで待ってほしい。」

そこまで言うと、隼太はスッと私に片手を差し出し、「俺が一人前になるのを、隣で支えてくれないか。」と言った。

差し出した手が少し震えている。
きっとそれは寒さのせいだけじゃないんだと思う。
夢であってほしくないと思った。ううん、夢なんかじゃない。
今この瞬間、隼太は私の前にいる。そして私にそばにいて欲しいと言っている。

何度夢見た光景だろうか。
別れたあの日からずっと、隼太のところに戻りたい気持ちでいっぱいだった。
今やっと、その手を掴むチャンスがやってきたの。
もう怖がっちゃいけない。

私は着けていた手袋を外し、ひんやりと冷え切った彼の手を握り返した。

こんなに冷たくなるまで私を待っていたの?

冷たい彼の手を温めようと、私は両手で包み込んだ。
そんな私の行動を見て彼が目を細めて笑った。

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