想い花をキミに
再びざわめく場内。

「どういうことだね。私の娘は大河原藍だ!間違えるな!」

「申し訳ありません!」

怒り出した大河原財閥のトップに対し、隼太のお父さんとアナウンス係が必死に頭を下げている。
そんな彼らの横でマイクを持ち直した直した隼太は、

「間違ってなんかいませんよ。俺の婚約者は、清宮亜砂果さんです。」

と堂々と言い切ったもんだから、さらに会場はパニックに陥った。
そして隼太はそのまままっすぐ私の方へと向かって歩いて来た。

いつから気づいていたんだろう。だけど、その足取りはしっかりと私を目指している。

会場の隅にいた私の少し手前で立ち止まると、彼は手に持っていたマイクを近くのテーブルへと置いた。

もう一度言おう。会場内にいるのは大勢の来賓と偉い社長さんらしき人々。

彼らの視線を一身に受けているのは、私の愛しい人。

「隼太?」

彼が見つめる先にいるのはもちろん私。

たくさんの人の注目を浴びているけど、今の私には彼がくれたこのドレスという名の鎧があるから不思議と何も怖くないと思えた。

ご令嬢の着物よりは輝いていないかもしれないけど、私には十分すぎるくらいだよ。

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