想い花をキミに
「なあ、ちょっと寄って行こう」

会場を後にした私たちは隼太の一言である場所へと向かっていた。
着いた先は私たちが出逢ったあの公園。

だけどなぜか隼太は公園の前じゃなくてその少し手前で車を停めさせて、「降りよう」と私に声をかけた。

不思議に思ったけど、彼の言う通りに私も車から降りる。

「覚えてる?この公園で初めてあった日に俺が言ったこと」

公園へと続く道をゆっくり並んで歩いていると隼太が思い出したように私に尋ねてきた。

「ん?何のこと?」

「笑ってみてくれないかって言ったこと。」

「あー!分かるよ。思いだした。急に何って思ったもん。」

「だよな。」と隼太が屈託ない顔で笑う。

「自分の目が信じられなかったんだ。あの時の元気な笑顔の女の子が、今じゃこんなにボロボロになって目の前にいるなんてさ。」

「そうだよね。あの時はひどかった。」

思い出すだけで身体中が痛みだしそう。

「でも隼太のおかげで私は今もこうして生きてるんだよ。本当にありがとう。」

私が笑いかけると、彼は優しく目を細めて私を見つめる。

「あ、でも本当に良かったの?ご令嬢との結婚を破談にしちゃって。経営とか大変になるんじゃない?」

と心配する私をよそに、隼太は涼しい顔で、

「平気だよ。大河原財閥よりもっと格上の財閥に直談判したんだ。経営が軌道に乗ったら必ずその恩を返すってことで。まあ、恩返しなんかしなくても、元々父さんが大河原財閥にしか興味なかっただけで、融資を名乗り出てくれていたところは他にもあったんだよ。だからわざわざ気持ちのない結婚をする必要なんか、始めからなかったんだよ。」

と笑った。
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