想い花をキミに
「そっか。じゃあ経営の件は良しとして、どうして披露宴に遅れてきたの?」

「あー、それはな」と言葉を濁しながら、彼は鼻の頭をかいた。

「あれだよ。亜砂果の書類の手続きに思ったより時間がかかっちまって、それを取りに行ってたら遅くなったの。」

とバツが悪そうに言った。

「いやーまさか祝辞にも遅れるとは思ってなかったから俺もびっくり」

「そうだったんだ。ありがとね、私のために」

「これくらい何てことないよ」

ちょっぴり誇らしげなその顔を見ていると、不意に私も以前の会話を思い出した。

「あ、そういえば隼太ってさ、昔ある医者に救われたって言ってたじゃない?それってもしかして……」

「そうだよ。亜砂果のお父さんだよ」

私が言い終わるより早く隼太が答える。

「やっぱりそうだったんだ。なんか隼太の事、見た気がしてたんだよね。たしか交通事故とかじゃないっけ?」

「そうそう。遊んでて道路に飛び出したらひかれちまってさ」

とやんちゃだった当時を思い出して彼が笑う。

私たち、ずっと前から出逢ってたんだもんね。

「あ、でも隼太昔は私の事あさかちゃん、あさかちゃんって呼んでたのに今じゃ"おい亜砂果"って呼び捨てだよね。再会した時からそうだったし。」

ついでに思い出したように私がそう言うと、隼太は唇をちょっと尖らせて、

「それはお互い様だろ。そっちこそ隼太って呼んでるじゃん。」

「それは隼太がそう呼べって言うから……。じゃあはっくんって呼ぶ?」

といたずらっぽく言ってみると、

「やだ。絶対やだ。やめてくれ。」

と赤くなりながら彼が全力で嫌がる姿があまりにもかわいくてつい、

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