想い花をキミに

love stage4. 似たもの同士

あの男がいた。
私は暗くて長い道のりをひたすら走って逃げている。
頑張って走ってるんだけど、なぜか思う様に前には進めなくて────

どんどん男の影が近づいてくる。

「はぁはぁ、助けて。...」

苦しい。捕まってしまう。
すぐ後ろで男の影が私の腕を捕まえた────

「いやあーーーーーーーーー!!」

抵抗する代わりに力の限り叫んだ。

「亜砂果!亜砂果!!」

近くで会いたかった人の声がする。
気が付くとそこにいたのは私を救ってくれた彼がいて、心配そうな目で私を見ていた。

「隼、太?」
「そうだよ。うなされてたみたいだけどもう大丈夫だから、な。」
「隼太ぁ......」

隼太を見て安心したせいか急に涙が溢れてきて、私は急いで布団をかぶった。

泣くな泣くな。泣いちゃダメ。
でも、隼太を見て本当に安心できたの。

涙を拭おうとしても経験した恐怖と彼に会えたことで気持ちが一気に緩んだせいで涙が止まらない。

すると、隼太が布団の上から優しく私の背中をさすってくれた。
そして、
「また何かあったんだろ。こんなに怪我もしててさ、絶対只事じゃないって思ったよ。でも、あまり話したくないんだろうなって思うから無理に話さなくてもいいけど、辛いときは誰かに話すってことも必要なんだぞ。お前、人に甘えるの苦手そうだもんな。俺、亜砂果の気持ちなんとなく分かるような気がするから、俺で良ければどうしてこんなことになったのか聞かせてくれないか。亜砂果の事を支えたいんだ。」

と言った。
布団から顔を出すと、隼太が優しいまなざしで私をみつめている。
< 29 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop