想い花をキミに
どうしてだか、私はこの女医さんにも初めて会った様な気がしなくて、隼太にした話と同じものを繰り返していた。
そんな私を、「怖かったね。頑張ったね」って手を握りながら聞いてくれる姿がどうしてかお母さんに似てると思えたの。

そして全てが終わると、私は温かいご飯を食べて深い眠りについた。
こんなに穏やかに眠ったのはいつぶりだろう。

翌朝目覚めるとすでに隼太が来ていて、私の目覚めを待っていた。

「おはよう。」

「お、おはよう。ごめん寝過ごしちゃった。」

「いいよ。ゆっくり準備して。」

「急ぐね。」

「ゆっくりでいいから。それより、傷は?」

「痛むか。」と私の身体に巻かれた包帯を見ながら隼太が尋ねるから、「痛くないよ。」と明るく返した。

鎮痛剤の効果で痛みはほとんどなかった。

だけど、「強がり。」と隼太が疑ってるような口ぶりで言うから、「強がってないもん。」とだけ返して急いで身支度を整えた。

身支度を済ませて外に出ると、そこには一台の高級車が止まっていて、

「乗って。」

と中から隼太が出てきて扉を開けてくれた。

「え、これで行くの?」

「そうだよ。荷物とか色々あるだろ。歩きだと運べないから車出してもらった。」

「出してもらったってどこから?」

「いいから行くぞ。」

隼太が私の質問を遮り、私を車に押し込む。
一体隼太って何者なの。

「秘密。今はな。」

驚く私を横目に見ながら隼太がいじわるそうに口角を上げて言った。









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