想い花をキミに
「別に今更母親に会いたいとは思ってないけど、元気かどうかは気になるし、一人で暮らしてると家族っていいなって思えてくるんだ。」

と寂しそうに語った彼に、私たちはどこか似ているものを感じた。

家族がいない私と、家族はいるけど一緒に暮らしていない隼太。
お互いに家族を求めて生きているんだよね。

「今日、亜砂果の継母を見て思ったんだ。仕事ばっかりしていた父親のせいで、俺の母さんも見ず知らずの男と帰ってくることがあってさ。そん時の俺も今日の亜砂果と同じ気持ちだったなって。気持ち悪いっていうか認めたくないというか。そんな俺だから多分、亜砂果の事を他の人より理解できる気がするんだ。」

こんなに前向きで強そうな隼太にもそんな過去があったなんて、夢にも思わなかった。一人で家を出て寂しかったはずなのに、隼太はまっすぐに生きている。

「強いね、隼太は。」

隼太の寂しさを少しでも埋めてあげたくて彼の身体を抱きしめると、「俺は平気だよ。」って微笑むから、「平気じゃないでしょ。」って抱きしめる腕に力を込めた。
隼太だって強がりだよ。

私たちはお互いに悲しみを抱えているからこそ、惹かれ合うのかもしれない。

「私がそばにいるからね。」

「なんだよ急に。」

「なんとなくね。」

「変なやつ。」

お互いの温もりを感じながら、私たちは傷ついた心を癒し合っていた。
そんな高校1年生の冬休みが終わろうとしていた。



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