想い花をキミに
私は家に帰っても隼太のことばっかり考えていた。
今日の隼太は絶対におかしかった。

「そんなにダメだったのかなぁ、この髪型。」

帰りはいつも通り送ってくれたし、別れ際にキスもしてくれたけど
それも触れるだけのそっけないもの。全然物足りない。
疲れてたのかな。
もやもやした気持ちを抱えたまま、隼太がくれたヘアゴムをぎゅっと握りしめる。

それからまたバイト三昧の日々が続き、あれ以来隼太には会えていなかった。

バイト帰りに久々に隼太のアパートに寄てみようと思い合鍵を使って家の中に入ったけど、隼太はまだ帰って来てなかった。

「珍しい。隼太がいないなんて。」

掃除をして待っていても隼太は一向に帰ってこない。
電話もしてみたけどただ着信音が鳴り響くだけ。
いつしか私は待ちながら眠ってしまった。

物音がして目を覚ますと、丁度隼太が帰ってきたところだった。

「ごめん。起こした?」

「ううん、自分で起きたよ。」

「そっか。」

隼太、なんか元気ない?

「どうしたの?」

「何が?」

「元気ない感じするから気になって。」

「そんなことないよ。」

それっきり隼太は何も言わなかった。
一点を見つめたまま黙り込む彼の様子になんとなく違和感を覚えたけれど、これ以上話しかけちゃいけない気がして私は何も聞かなかった。
聞かない方がいいのかなって思って気づいていない振りをしてあげたの。
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