想い花をキミに
「おい、おい起きろ。まじで死ぬぞ。おいって。」
誰かが私の肩を揺さぶりながら大声で呼びかけている。
睫毛まで凍り付いてしまったせいか、うまく瞼が開かないけど、パチパチと頬を刺激する痛みが、寒さで敏感になった皮膚には鈍い痛みとして伝わってきた。
「おい、大丈夫かよ。立てるか?」
私の瞳を心配そうにのぞき込んでいるのは同い年くらいの男の子。
一人では立ち上がれない私の肩をつかんでゆっくりと身体を起こしてくれた。
「なんでこんなとこで寝てんだよ。まじで死ぬよ?」
彼にほとんどの体重を預けながらゆっくりと立ち上がってはみたものの、起きたての頭ではすぐにこの状況を理解できずにいた。
「私、生きてるの?」
かすれた声でそう尋ねると、その男の子は「生きてるよ。」と教えてくれた。
その目はまるで"こいつ、頭のネジが外れたのか?"とでも言いたそうな、奇妙なものを見ているかのようだったけど。
「そっか。」
少しずつ自分の状況が分かってきた。私、死ねなかったんだ。
この人が雪の上で眠っている私を見つけて起こしてくれたんだ。
「あ、今ちょっとがっかりしたろ?もっとかっこいい王子様に起こしてほしかったって思っただろ。」と彼が意地悪そうに口を開いた。
初対面で、しかもこの状況でそんなことを考える余裕なんてないよと思いつつ、
「違うよ。ただ生きてるのが不思議だなって思って...いたっ」
会話をしながら少しずつはっきりしていく意識の中で、それと同時に身体の感覚も戻ってくるのが分かった。