想い花をキミに
次の日の帰りもまた隼太を見た。
だけどその隣には決まってあの綺麗な先輩がいて──。

いつから一緒に帰る仲になったわけ?

募った不安が苛立ちへと変わっていく。
心の中を埋め尽くす霧がどんどん濃くなっていき、やがて真っ黒に変わっていく気がした。

一つ上ってだけでどうしてあんなに大人っぽく見えるんだろう。
スカートの長さだってそんなに変わらないのに妙に色っぽいし。
なんだか二人のほうがお似合いな気がしてきた。

そんな二人を眺めていると、

先輩が隼太の髪の毛に手を伸ばし、その髪についていた一枚の紅葉を取ってふふっと笑った。

その瞬間私の中の何かが崩れ落ちた音がした──。

それからの日々はもうよく覚えていない。
小さなことに苛立つし、物にも当たるようになった。

授業中に消しゴムを落としたことでさえ、なんでこんなものを拾わなきゃいけないのって思うくらい。

授業の内容も頭に入らなくて、先生に指名されても聞いていなくて怒られた。

「あさかなんかあった~?」

いつもの友達が授業終わりに心配してくれるけど、

「大丈夫大丈夫。ちょっと寝不足なだけ。」

と笑ってしまう。
本当は話せたら楽なんだろうけど、どうしてか皆にも言えずにいる。
皆が嫌いな訳じゃないの。
ただ、隼太のことを話したら自分が自殺しようとしてたことまで言わなきゃいけなくなると思ってそれが気になって言えずにいた。

皆の反応が怖い。

こんなに周りを気にする人間だったかなって最近は思うようになった。
変わってきたと思ってたんだけどな。
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