想い花をキミに
視線を合わせたくなくて私は隼太の足元を見つめた。
すると、ふうっと隼太がため息をつき、

「言ってくれなきゃ分からないだろ。俺たちこの前もこんな感じでお互いに言いたいこと言えなくて喧嘩しただろ。もう意地張るのやめよう。」

そうやって隼太が話しやすいように気を遣ってくれたのに、強がりな私は

「話すことなんてないもん。」

とはね返してしまう。
分かってる。ちゃんと話したほうがいいってことくらい。
でもどうしてもあの先輩より先に隼太のバイトのことを知りたかったって思っちゃうんだもん。
彼女なのに知らなかったことが悔しいんだもん。

すると、

「そうかよ。そっちがそんな態度ならもういいよ。好きにしろ。」

と彼が私の肩を掴んでいた手を離すと、向きを変えて去ってしまった。

待って!

咄嗟に追いかけようとしたけど、できなかった。
追いかけてどうするの?
なんていうの?
かける言葉が見つからなくて、私はただ遠ざかる彼の背中を見つめることしかできなかった。


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