想い花をキミに
すると突然、

「喧嘩しちゃったんだぁ。」

と背後から聞き慣れない声がした。
「えっ?」と思って振り向くと、そこに立っていたのはあの先輩で、

「泣くかと思ったのに案外強いんだね。」

と私を見て嬉しそうに笑っていた。

今一番逢いたくなかった人に、一番最悪な場面を見られてしまい、都合が悪くなった私は素っ気ない声を出す。

「何か用ですか?」

それでも冷静さを保とうと思っていると、

「用っていうかー、隼太の彼女がどんな子か気になったって感じかな。」

と指先で毛先をいじりながら答える先輩。

「でもなんかガッカリ。隼太ってカッコいいからすごくかわいい子が彼女なのかと思ったらこんな普通の子なんだもん。」

と私を上から下まで眺めたかと思うと、小ばかにしたように笑い出す。

「しかもこんなんで隼太の気持ち弄んでるとか、ほんとムカつくのよね。」

弄ぶって……

「私、弄んでなんかいません!」

声が大きくなる。初対面の人にこんなことを言われると気分が悪い。

「弄んでるじゃない。隼太がせっかく会いに来てもツーンとしててさ、彼女だからってそんな態度でいいと思ってるわけ?」

私を追い詰める先輩の目はきつく、思わず目をそらしてしまいそうになる。

「それは……あなたには関係ないと思います。」

「関係あるわよ。」

間一髪いれずに言葉を発した先輩の強気な態度に圧倒される。

「関係あるわよ。私、彼が欲しいんだもの。」

同じ言葉を繰り返し、自信たっぷりに言い切られる。

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