想い花をキミに
「入れば?」

何を思ったのか、結局ここに来てしまった。
私を見るなり隼太は驚いて目を見開いていた。

それもそのはず。唇には血が滲み、制服のボタンは取れてなくなっている。
おまけに髪はボサボサ──

合鍵を使わずに玄関のチャイムを鳴らしたのは、あんなことがあったのにしれっと合鍵で入るのはどうなのかと思ったからで。

「どうやって歩いたらこんなにボロボロになるんだよ。野良猫にでも襲われたか?」

と聞いてくる彼の声は真剣そのもの。
野良猫の方がマシだよ、と思った。
野良猫だったら隼太を奪いに来たりしないのもの。

何を話すわけでもなくじっと人形のように座るだけの私に、隼太は深くため息をつきながら傷の手当てをしてくれる。

「何がしたいんだよ。」

重い沈黙を破ったのは隼太の一言だった。

「何って……」

私は何がしたいんだろう。私にもよくわからない。
だけどこのままじっとしててもいけない様な気がしてここに来たの。

「隼太ってカフェのバイトしてたんだね。」

ポツリと呟かれた私の言葉に隼太の動きが一瞬止まる。
私はそれを見逃さない。その動揺は何?

「あー、うん。最近始めた。」

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