想い花をキミに
それからあの先輩のことだって。

隼太の高校での生活はあまり聞いたことがなかったから知らなかったけど、あんなに仲良しな女の人がいるなんて意外だった。

あんなに綺麗な人が近くにいながらどうして私なのって思ってしまう。
どうして隼太は私を彼女にしたの？
いろんな気持ちが一気に溢れてきた。
負けたくない。隼太を取られたくない。私に隠し事をしてほしくない。

だからこんなにボロボロになってまで戦ったのに……

「亜砂果？」

読みかけの雑誌をぱたんと閉じて、隼太が私の方へ姿勢を向ける。
私も隼太の方を向き直り、切なそうに見つめ返す。

隼太がいけないんだよ。私をこんな気持ちにさせるから。
自分の彼氏の近くにあんなきれいな女の人がいて、しかもライバル宣言までされちゃって平気でいられるはずないでしょ。
だから私は隼太の彼女の特権として、自分に唯一許されている、彼女にしかできない方法でその心を繋ぎ留めたいの。

「ん？ちょ…おい……！」

私は何も言わずに、油断して無防備になっていた彼の唇に自分の唇を重ねた。

< 93 / 211 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop