社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】

その1週間後、取引先最大手の満井(みつい)社長から会食の申し入れがあった。

投資をお願いできるかもしれない。

そんな期待を胸に、指定された土曜日の12時にホテルのフレンチレストランに出向いた。

個室に通され、挨拶をする。

「本日はお時間を取ってくださり、ありがとう
ございます。」

私も一緒に最敬礼をする。

顔を上げると、そこには、満井社長の他に綺麗なワンピース姿の女性が座っていた。

「まぁ、掛けなさい。」

満井社長に促されて、修努は着席をする。

私は、修努の後ろで立って控える。


「安井くん、ここにおりますのは、私の長女の
浩子です。
浩子、こちらが安井修努さん。
言った通り、いい男だろう？」

満井社長が、食事をしながらお嬢様に話し掛ける。

この会食の意味が分かった…


食事も終盤に差し掛かった頃、デザートを食べながら、満井社長は本題を切り出した。

「安井くん、どうだろう？
うちの娘を貰ってもらえないだろうか。

今年30歳になるんだが、箱入り娘に育てた
せいで、未だに男っ気がなくて困ってるんだ。

真面目で将来性のある安井くんなら、安心して
娘を任せられる。

もちろん、我が社としても全面的に御社を
バックアップさせてもらうよ。

きっとうちの後ろ盾があれば、新規契約も取り
やすくなるだろうし、業績も安定するだろう。
悪い話じゃないと思うが… 」