社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】
そんな事を考えながら、俺はダイニングテーブルにパソコンを広げて仕事をしていた。

時々、窓の外に目をやりながら。

すると、メモを見ながら、戸惑った表情でうろうろするのどかが現れた。

まさか社宅が一軒家だとは思わないだろうから、困ってるんだろう。

俺は、玄関から外に出迎えに行った。

「やぁ、のどか、いらっしゃい。
荷物はもう運び込まれてるよ。」

俺が声を掛けると、ホッとしたような戸惑ったような不思議な表情をした。

「あの、あ、こんにちは。」

のどか、思いっきりうろたえてるな。

「くっくっ
その顔だと、やっぱり気づいてなかったか。」

「あの…」

仕方ない。
自分で気付いて欲しかったけど、自己紹介するか。

「社長の安井修努(やすい しゅうと)だよ。
のどか、久しぶり。」

「え?」

あれ? まだ分からない?

「ええ!?
名乗っても思い出してくれないの?
すっげー、ショックなんだけど。」

でも、そんなのどかもかわいい。
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