社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】
のどかは、隣の部長に総務部のメンバーを紹介してもらうと、

「ちょっと挨拶してきますね。」

と、俺に断って、席を立った。

見ていると、一人一人、挨拶をしながらお酌をしている。

総務部は、ほぼ女の園だ。

男は数える程しかいないから、俺は安心してのどかを眺めていた。

すると、いつもの如く、花木が俺の隣に来た。

こいつは分かり易すぎるくらいあからさまに俺を口説きに来る。

いつもの事だと、俺は適当に相槌を打ちながら、一人ビールを飲んでいた。

だけど、花木と話したくないからといって、ビールを呷り過ぎたのかもしれない。

酔いが回り始めた。

マズイと思ったところで、

「社長、飲みすぎですよ。
こちらをどうぞ。」

と、烏龍茶のグラスが差し出された。

のどかだ。

一瞬で、自分の顔が綻ぶのが分かる。

「ありがとう。」

俺はのどかを見て言った。

「佐倉さんも一緒に飲もう!」

俺は、少しずれて、座布団を半分開けた。

「ほら、ここ!」

俺は座布団を叩いて、促す。

「もう、しょうがありませんね。」

のどかは、少し呆れた顔で、俺と花木の間に座った。

「のど…佐倉さんは、お酒強いの?」
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