社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】
「のどか。」

「はい。」

「俺が一文無しになっても、のどかは傍にいて
くれる?」

俺は、会社を失くす事より、のどかを失う事の方が、何倍も怖い。

すると、のどかがくすっと笑って言った。

「社長は、私の初恋をご存知ですか?」

のどかの初恋?
そんなの聞いた事ない。

「? いや?」

「私の初恋は、小学1年生の時でした。
相手は、とても優しい通学班の班長さんです。」

「のどか!?」

それって…

「きっとその班長さんは、ほんの少しの
お小遣いしか持ってなかったでしょう。
でも、私は好きだったんです。
お金があるかどうかは、人を好きになる
基準にはならないと思いますよ。」

俺が、のどかの初恋相手?

思ってもみなかった。

「くくっ
そうか。班長さんだったのか。
ありがとう。がんばれる気がしてきたよ。」

自然に笑みが零れる。

なんだ。

俺は初めから、のどかにとって男だったんじゃないか。

しかも、俺がのどかを妹だと思ってる時に、もう俺の事を好きだったなんて。

のどかには、敵わないなぁ。
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