社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】
俺は家に入ると、直接2階へ向かった。

「のどか! どういうつもりだ!?」

俺はのどかが勝手に身を引こうとした事が許せなかった。

「秘書として、当然の仕事をしただけです。」

のどかは淡々と答える。

「じゃあ、のどかは!?
秘書じゃない佐倉のどかはどう
思ってるんだ!?」

「私は、修努の幸せを願ってる。
例え、それが浩子さんとの人生であっても、
修努が幸せならそれでいい。」

のどかは少しだけ感情を露わにして言った後、そのまま俺に背を向けた。

顔を見せない気か?

俺はのどかの肩を掴んで向き直らせた。

のどかは、泣いていた。

「だったら、なんでのどかは泣いてるんだ?」

のどかの涙を見た瞬間から、不思議と怒りは治っていった。

「た、玉ねぎが目に染みたのよ。」

玉ねぎ!?

「どこに玉ねぎがあるんだよ。」

俺は、両手をのどかの頬に添えて、親指の腹でのどかの涙を拭った。

「ハンバーグに入ってるわよ。
さっき、たくさん刻んだから、
まだ染みるのよ。」

まったく…

「ほんとに意地っ張りなお姫様だな。
素直に泣けよ。」

俺はのどかを抱き寄せた。
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