社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】
「結論を急ぐ必要はないと思います。」

のどかはやっぱり、そう来たか。

だけど…

真剣なのどかの顔を見て、俺はくすりと笑みが零れた。

「急いでも、急がなくても、結論は同じです。
私は、佐倉を例え仕事中だけだとしても、
手放すつもりはありません。
大変、申し訳ございません。」

俺は出来る限り深く頭を下げた。

すると、それを見て、満井社長は、声を上げて笑った。

「ははっ
娘の言った通りだ。」

は!?

俺は、のどかと顔を見合わせて、首を傾げた。

「この話を娘にしたら、絶対に安井くんは
彼女を譲らないだろうと言われました。

高校生の頃から思い続けてようやく叶った
恋だから…と、娘が言ってました。

30歳間近だというのに、未だ夢見る少女の
ようなところのある子で、困るのですが、
娘からの伝言です。

2人の揺るぎない絆に五千万の投資をしたい
そうです。」

「え!?」

俺は驚き過ぎて、二の句が継げなかった。

「あの子は、男女関係には疎いですが、仕事は
できる子です。
現在、うちの子会社で、代表を務めております。
その会社からの投資です。
受け取っていただけますか?」

「はい。ありがとうございます。
必ず、何倍にもして、配当をお返しします。」

浩子さんには、感謝してもしきれない。



この事をきっかけに、俺の会社は持ち直し、業績も安定した。



半年後、当初の予定通り、株式公開もした。

その1年後には、株価が2倍になった。

これで、満井浩子さんへの恩返しになればいいと思う。
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