決して結ばれることのない、赤い糸
今日も、35度にも届く気温が予想されている。


隼人もカズも毎試合出場して、この試合も前半からピッチを駆け回っていて、絶対疲れているはずなのに――。

そんな態度は一切見せずに、ボールに食らいついていく。


その真剣なまなざしの隼人の姿に、思わず胸がドキッとする。



そして、とうとう試合が動かないまま、ロスタイムに入った。


ロスタイムは3分。

ここで決まらなければ、PK戦に持ち込まれる。


少しでも、この応援が届けば…!


そんな思いで、わたしはフルートを吹いた。



ロスタイム、残り1分。

パスの回し合いからボールを奪ったカズが、相手ゴール目掛けて走り出す。


時間から見ても、おそらくこれが最後の攻撃になる。


カズは逆サイドにいる3年生の先輩に、大きな弧を描くようにパスを出す。
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