決して結ばれることのない、赤い糸
「カズはもう申請したんだっけ?」

「ああ、夏休みの間に」


教室掃除が終わったわたしたちは、部活へ向かうためにいっしょに昇降口へと向かっていた。


「あっ、かりん!」


そこに、たまたま隼人とも合流した。


「なんの話してたの?」

「パスポートの話!そろそろ申請しに行かないとと思って」

「俺のクラスも、さっき担任から説明あったよ。余裕持って、早いうちに行けよ〜って」

「やっぱりそうだよね。隼人はもう行った?」

「俺は、今週末に行くよ。母さんが必要書類を用意してくれたから」


聞くと、顔写真や戸籍謄本や本人確認書類など、パスポートの申請にはいろいろなものが必要なんだそう。


…これは、お母さんと冷戦状態を続けている場合ではなさそうだった。


でも、ほとんど口を利いていないのに、どうやって話かけたらいいものか。
< 247 / 320 >

この作品をシェア

pagetop