決して結ばれることのない、赤い糸
このときのわたしは、夢にも思わなかった。



待ちに待った、隼人とのデートの日。


わたしはこの前買ったワンピースを着て、お気に入りのブーツを履いた。

今日は、冬の気温が逆戻りと天気予報で言っていたから、コートも羽織った。


「いってきます!」

「いってらっしゃい!気をつけてね」

「はーいっ!」


この日が待ち遠しくて、気分が舞い上がっていたわたしは、お母さんの何気ない言葉に対して、適当に返事をしただけだったけど――。

お母さんの言う通り、もっと…ちゃんと気をつけるべきだった。


わたしが気をつけてさえいれば、あんなことにはならなかったのに…。



隼人とは、地元の駅の前で待ち合わせをしている。


太陽も傾き始め、お昼よりも気温がぐんと下がってきた。

白い息を吐きながら、駅までの道を歩く。
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