別のお話。
俺の声でボリュームを下げるも二人の小競り合いは小さく続けられている。
「ありがとうね春人。あとでお金渡すわね」
「いいよ、プリンくらい」
「そう?悪いわねえ」
「それよりご飯。お腹空いて倒れそう」
「はいはい。すぐに持ってくるわね」
母さんが用意してくれた夕飯を食べてる間も海と空のやり取りは喫茶店に流れる音楽のように当たり前に続いていた。
食事と風呂を済ませ自分の部屋へと向かう。
小学校に上がるのと同時に与えられた俺のテリトリー。
使い古された学習机に色褪せたカーテン。
十年間で使い込まれた俺の部屋。