別のお話。
ああ、最悪だな。
大好きな人をこんなふうに泣かせるなんて最悪だ。
俺はシヅキの腕の中から抜け出して真っ直ぐと向き合った。
「ごめん。もう大丈夫。二度とあんなことはしない。
シヅキを消したり忘れたりしない。どれだけ辛くても覚えてる。
だって、俺がシヅキから貰ったのは辛さじゃなくて幸福だ」
「やっと笑ってくれた」
言われて初めて気づいた。
いまから大好きな人が消え行こうとしているのに俺は笑ってる。
「ねえ春人。約束したよね。私が消える時は春人に言うって」
「ああ」