別のお話。

振り向きざま、シヅキは「ふふっ」と小さく笑った。

「春人にはいまを生きてなんて偉そうなこと言ってたくせにダメだね。

せっかく神様にチャンスをもらってここへ来れたのに、離れることが嫌でなかなか切り出せなかった」

「俺がシヅキでもそうなってたさ」

「そう、かなぁ?

春人は優しいから、きっと私のことを優先してくれたんじゃないかなって思うんだけど」

「そんなことない。現に辛さから逃げるためにシヅキを忘れてた」

「そっか」

シヅキはそう溢すと胸元をコソコソと漁って服の内側に隠れていたネックレスを取り出した。
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