別のお話。

「うん……うん。分かった。分かったよ。

だけどシヅキもこれだけは覚えてて欲しい。俺はシヅキが好きだ。

これから先もし他の人を好きになってもシヅキのことを忘れたわけじゃない。

嫌いになったわけでもない。好きが無くなったわけじゃない。

俺はいつまでもずっとずっとシヅキが好きだ」

「嬉しい。私もだよ。私もずっとずっと春人のことが……」

大好きなその人はいまにも泣き出しそうなのに、その顔に満面の笑みを浮かべる。

『大好き』

その声は吹いた風に混ざっていた。

それでもはっきり聞こえた。

俺の大好きな人は吹いた風に乗るように俺の目の前から消えた。
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