別のお話。
家までの道を少しだけ外れて小さな丘で自転車を止める。
映画の舞台にもなったその小さな丘で、真ん中に植えられた木の横に自転車を止めて乱れた息を整える。
映画の舞台になったのは俺が生まれるずっと前。
それでも未だにこの場所には人が訪れる。
俺でも知っているその作品は名作中の名作で、だけど俺にはその良さはよく分からなかった。
白い光を灯しながら一台の車が近づいてくる。
「ほら、ここだよ!」
「意外と地味だな」
「もう。せっかく来たのに台無しになるようなこと言わないでよね」
「だってあの店も何もないじゃん」