春待ち
その時、部屋の奥からベランダに誰かが出てきた。すぐに恵だと判った。いや、恵だと僕は知っていたはずだ。
「何してんの?」
恵は僕に向かって声を張り問い掛けた。
「恵こそ、何してんの?」
恵は曇り空を見上げた。僕も同じ空を見上げた。

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