春待ち
数台の車からのヘッドライトに照らされて、僕は横断歩道を渡り切った。そして複雑に入り組んだ道へと吸い込まれる。左右に見える家の数々が玄関に燈された冷めた明かりで僕を迎えた。空を見上げたら星は見えなくて、電柱の蛍光灯が視界に入って僕の気分を悪くさせる。風が冷たい。やっぱりまだ、春は来ないのか。

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