春待ち
「でももう逃げない。私は覚が好きなのよ。偶然が重なり過ぎたあの日から、私はずっと覚の側にいたかったのよ。ごめんね、時間がかかって」
恵の目に光るモノが見えた気がした。曇り空の中の星。僕だけの星。
僕はただ「いいよ」と返した。恵が今度はただ深く息を吐いて、僕を見た。

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