爽やかくんの為せるワザ
「ていうか、そもそもなんで敬吾は花恋のこと好きになったの?」
桃ちゃんが敬吾くんに向き直ると、敬吾くんは座ったままぐっと俯いた。
ほんのりとその頬が赤く染っているのが確認出来る。
私が立ったままでいると、沙羅ちゃんが「ん」と私を膝の上に乗せてくれた。
「1年の時……夏頃だったかな……、渡り廊下で俺盛大に転んじゃったんだよ」
「あらら」
「怪我もなくてそんな痛くなかったんだけど、カツらは『なんで何も無いとこでそんな転ける?』って笑っててさ。
別に笑われることは慣れてるし嫌とも思わなかったけど、周りに女子とかいて転けたことが恥ずかしくなってきてさー」
「カツひどいな」
「いやカツはカツなりに笑いに変えてくれようとしてたんだと思うんだよ。実際俺も恥ずかしさを笑って誤魔化してたし」
「あー、確かにそれかもね」
「そんで、そろそろ立ち上がろうとしてた時にさ、通りがかった花恋ちゃんが俺に『大丈夫?』って手差し伸べてくれたんだよ!
あのミスコン出てた花恋ちゃんがこんな俺に優しくしてくれるなんてって思ってまじびっくりした!」
「へー、それで恋に落ちちゃったか」
「ま、まあな。あんなに可愛くて性格も良かったらそりゃ惚れるって!」
花恋ちゃん愛を熱烈に主張する敬吾くんが、なんだか輝いて見えた。
思ったよりすごく良いきっかけだ……。
なんか、応援したくなる。