爽やかくんの為せるワザ




「……うん、私も運命の人がいるって……信じてる。
笑わないんだね……藍くんは」


「笑わないよ。
珠姫ちゃんも俺のこと笑わなかったでしょ?」






にこっと笑った藍くんからは白い整った歯が見えて。


それを見てると、心が浄化されるような感覚になる。




……笑うわけない。

だって私も、藍くんと少し似てるから。




藍くんも、そう思ってくれたのかな。






「……お互い出会えるといいね、運命の人」


「うん……」





頷く私をじっと見つめる藍くん。


私もそんな藍くんから目を逸らせなくなった。



足元ではマックスが私達を見上げているのが分かる。





……マックスの視線が気になるけど。


もう少しこうしていたい……と思う。



目を逸らしてしまうのが惜しいというか……。




もう少し――






「え、何してんの?」







びくっと心臓が飛び跳ねそうになる。


振り返ると、階段から下りて来た敬吾くんが私達を見てポカンとしていた。



け、敬吾くん。





「な、なななんにも!?」


「敬吾こそどうしたの?」


「トイレ借りようと思って。いい?」


「いいよ。皆勉強してた?」


「全然してないぞ。カツが卒アル広げて盛り上がってた」


「また勝手に……まあいいけど」





しょーがないな、と笑みをこぼす藍くん。



……私と違って、藍くんはあんまり動揺したりしないんだね。


まあその方が怪しまれたりしないんだけど。



敬吾くんも何も思ってないみたいだし。



ふぅ、焦った。



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