爽やかくんの為せるワザ
――「それで、お願いって?」
色んな生徒が賑わう廊下を、私と佐賀くんは仲良く肩を並べて歩く。
下校する人や部活に行く人、掃除をしてる人や教室で溜まってる人。
たくさんの人の声が飛び交う中、隣の彼から小さく声が聞こえてきた。
「……僕の……親に会って欲しいんだ」
……へ?
「え、親?佐賀くんのご両親?」
「うん……」
「ど、どうしてそんな……なんでっ?」
あまりにも突然過ぎるお願い。
びっくりして理由を聞かずにはいられないよ。
驚く私を見て、佐賀くんは申し訳なさそうに俯いて続けた。
「僕が……ミスターコンで優勝したことを親に話したら、すごくびっくりされて……。
成瀬さんのおかげっていう話をしたら……『ぜひその子を連れて来て欲しい』って言われちゃって……ごめん」
そ、そういうこと……?
そんな……大層なこと私してないのに……?
まじまじと佐賀くんを見つめていると、彼は恥ずかしそうな、もしくは気まずそうな顔をした。
「……随分アクティブなご両親だね」
「僕と真反対なんだよ……。
でも、成瀬さんが嫌ならほんと、断っていいから……」
次第に小さくなる声。
……きっとこの話を切り出すまでにめちゃくちゃ悩んだんだろうな。
言いにくいことを頑張って言ってくれたのか、佐賀くんは。