爽やかくんの為せるワザ
おわびに
――そしてやってきたカラオケ当日。
カツくん筆頭に、我々はぞろぞろとカラオケへ向かって歩いていた。
ざっと見て男女15人くらい。
もっとカツくんや桃ちゃんが誘えば増えていくんだろうな。と、2人の人脈の多さに改めて感心する。
「珠姫珠姫、羽水いんぞ」
隣を歩く沙羅ちゃんがこそっと耳打ちをしてきた。
視線を斜め前方へ向けると、羽水くんがカツくん達と楽しそうに話している横顔が見える。
「…そ、そうだね」
「話し掛けなくていいの?」
「いい、いい!タイミングがあれば話す程度でいいのっ」
私が慌てて首を振ると、沙羅ちゃんは少しだけ不満そうに顔をしかめた。
……だって、わざわざ自分から「やあ羽水くん!失恋の傷は癒えたかい?」って聞きに行けるほど私は積極的じゃないし。
しかも、もし羽水くんが気にしてる事だったら掘り返すのもかわいそうだし。
だからといって、他に羽水くんと共通の話題があるわけでもないんだよね……。
これを機に仲良くなれたらそりゃあ友達増えるし嬉しいけど、無理矢理行くのも気が引ける。
だからタイミングを待つ!これに限る!
「頬の腫れ引いてるね」
さっきまで他の子達と話してた桃ちゃんがいつの間にか私の隣を歩いていた。
そして羽水くんの方に目を向けて私に耳打ちする。
……ほんとだ。
もう頬、なんともなくなってる。
良かったぁ。
「たまのおかげだね」
「いやぁ、あんまり関係ないと思うけど……」
「カツらにめちゃくちゃいじられてたけどね、藍くん」
そう言って笑う桃ちゃんに、私も少し顔を緩ませた。
……カツくん達にいじられるくらいってことは、羽水くん自身もあんまり気にしてないのかな。
カツくん達はよくいじったりするけど、人の嫌がる事はしないってよく聞くし。
大丈夫みたいで、本当に良かった。