爽やかくんの為せるワザ
……どうしよう。
でも、会うだけなんだよね。
友達として、挨拶しに行くだけなら。
佐賀くんのご両親もそう言ってくれてるし、佐賀くんの為にも行くべきなんだろう。
男の子の家に1人で行くっていうことに少し抵抗はあるんだけど、ご両親もいるし理由が理由だし、大丈夫だよね。
……なんて、誰に言い訳してるんだろ。
「……いいよ」
「えっ」
「私はなんにも出来てないんだけど……佐賀くんの為になるなら、挨拶くらい全然いいよ」
「……ほ、本当に?」
「うん!今日でも大丈夫だし」
「……じゃ、じゃあ……今日お願いします……」
「あはは、なんで敬語?」
なぜか泣きそうな顔をする佐賀くんに、私は優しく笑い掛けた。
佐賀くんは人に気を遣い過ぎるところがある。
それは良いことでもあるけど、佐賀くんにとって苦しいことでもある。
そうなるのは、佐賀くんが自信をあまり持ててないからだろう。
だから、少しでも自信を持ってもらえるように……。
このくらいのこと、誰も迷惑に思わないことを覚えてもらいたい。
「……あれ、珠姫ちゃん?」
下駄箱からローファーを取り出そうとしたその時、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
驚いて振り返ると、そこには帰ろうとしていたであろう藍くんが立っていた。