爽やかくんの為せるワザ
――佐賀くんの家にお邪魔してから1時間くらいで私はお暇することにした。
帰る時、佐賀くんが「駅まで送る」と言ってくれたので2人で一緒にマンションを出た。
「……ごめん成瀬さん。疲れたでしょ……?」
隣を歩く佐賀くんが俯いたまま話す。
あれからもずっと佐賀くんのお母さんによる質問が続き、佐賀くんは最終的に無理矢理話を切り上げさせたのだ。
「ううん。お話するの楽しかったよ」
「……成瀬さんは優し過ぎるよ。会わせない方が良かったのかも……」
むしろ佐賀くんの方が疲れてるんじゃ。
「そんなこと言わないでよ佐賀くん」
「……え?」
「私今日佐賀くんの家に行けて、本当に良かったと思ってるんだよ」
微笑む私をまじまじと見つめたまま、佐賀くんは信じ難いという顔をした。
「佐賀くんのこと色々知れたし、意外な一面も見れたし。
前よりもっと仲良くなれた気がするもん」
佐賀くんの家庭とか関係を知れたこととか、フォローしてくれたこととか、こうやって2人で話すことが増えたこととか。
前まではなかったことだもん。
佐賀くんの周りの環境も変わってきてるし、すごくプラスに働いてきてる気がするのは私だけかな。