爽やかくんの為せるワザ
* * *
珠姫達より先に学校を後にした藍は、1人で帰路を歩く。
すると前方に沙羅と桃の後ろ姿が見えた。
「よっ」
後ろからぽんっと桃の肩を叩くと、桃は藍を振り返って驚いた表情を見せた。
「藍くんじゃん」
「お、羽水も帰りか?」
「そう。駅まで一緒に行こうよ」
「もちろん。てか1人?」
「カツは用事で敬吾達はバイトと部活」
「へぇ、羽水が1人ってなんか珍しいな」
「そんなことないよ。部活入ってないし、たまにあるよこういうこと」
あはは、と笑う藍をじっと見つめる桃。
いつもの藍とは違う違和感を感じていた。
「……藍くん、具合悪い?」
「え?……いや、全然快調だよ?」
「なんか様子が変」
「そうなの?どういうとこが?」
「今ここにたまいないの気付いてるでしょ?
いつもなら絶対「珠姫ちゃんは?」って聞くのに、気にする素振りも見せない」
桃は変わらず藍を見つめ続ける。
沙羅も「そういえばそうだな」と同じく藍を見つめた。
藍はその話題に少しだけ言葉を詰まらせる。
彼なりにいつも通りにしていたつもりが、逆に違和感を覚えさせてしまっていたのだ。
そんな自分に少し溜息を漏らした。