爽やかくんの為せるワザ
「珠姫ちゃんには会ったんだ、下駄箱で」
いつものように笑って答えた藍に、桃と沙羅は顔を見合わせた。
「佐賀くんも?一緒にいた?」
「うん。佐賀くんの家に行くって」
「「え!?」」
桃の高い声と沙羅のハスキーな声が重なる。
激しく食い付いてきた2人に、藍は驚きながらもしまったと顔をしかめた。
まさかこの2人が佐賀の家に行くことを知らないとは思いもよらなかったのだ。
「た、多分明日珠姫ちゃんから報告はあると思うけど」
「おう、そうだろうよ。そんでどーいった経緯でそんなことになった」
「……えーと、佐賀くんのご両親?が珠姫ちゃんに会いたいらしくて……」
沙羅達に詰め寄られた藍は、若干引き気味に説明を続けた。
藍の説明を聞いた2人は顔を見合わせながら、「へぇー」と言葉を漏らす。
「佐賀くんって意外と大胆だね」
「馬鹿言うな。あの佐賀だぞ?そんな根性ねーよ」
「なんで沙羅がそこまで言えるのよ」
「見りゃ分かんだろ。つーか珠姫に手ぇ出したらとりあえずぶっ飛ばす」
沙羅と桃のやり取りを藍は呆然と眺める。
……足立って、珠姫ちゃんのお母さんみたいだ。
珠姫ちゃんのお母さんに会ったことはないけど。
「で、藍くんが元気なさそうに見えたのはこれが理由なの?」
桃は改めて藍に向き直り、顔を覗き込む。
いつもとは違う、困惑を隠し切れていない笑顔を見せる藍に、桃も沙羅も気付いていたのだ。