爽やかくんの為せるワザ
「……うーん」
困ったように笑って、藍は少しだけ俯く。
「自分でも……よく分かんないんだけどさ」
「うん」
「珠姫ちゃんと1番仲良い男子って、勝手に自分だと思ってて……。
でも、佐賀くんとも仲良いし、なんか……もやもやして」
歩くスピードを緩める藍に、沙羅も桃も歩幅を合わせる。
弱々しく笑う藍を見つめながら、桃はうーんと口を尖らせた。
「それってヤキモチ?」
「……多分、そうかも」
「なるほどな。自分と一番仲良いと思ってたけどそうじゃねーかもってなって落ち込んでたと」
「その通りだと思うけど、改めて聞くとすごい自分勝手だね俺」
「そんなことないよ、藍くん。正直に話してくれてありがとね」
桃は優しく笑って、藍の肩を軽く叩いた。
「まー佐賀は顔良いしな」
「……顔は関係ないよ足立」
「羽水もまあ顔良いし、あんま気にしなくていいと思う」
「あの、足立……だからそこは関係ないって」
突っ込む藍に、沙羅はあははと笑ってみせる。
「珠姫は顔で友達を判断しないわな」
「当たり前でしょ。
でも藍くんや佐賀くんと仲良くなりだしたのって割と最近だよね。同じ時期くらい」
「うん」
「じゃあどっちも同じくらい仲良いってなるのかな」
「でも、俺はクラス違うし」
こんなに細かいことを気にするなんて、自分らしくない。
珠姫ちゃんが友達と仲良くなることはとても良いことだし。
……でもなぜか、胸がざわついて落ち着かない。
なんて心が狭いんだろう。
藍はそんなことを考えながら、深く溜息をついた。