爽やかくんの為せるワザ





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「やべぇわまじで、腕の筋肉痛」




昼休み、食堂で昼食をとっていたカツと藍。


腕を揉みほぐしながら嘆くカツを、藍はカレーを頬張りながら見つめる。




「そんなに?大丈夫?」


「徹底的に重い物ばっか運ばされたからなぁ」


「店の手伝い大変だね」




家が定食屋を経営している為、カツは度々店の手伝いをしている。


それを知っている藍はそんなカツに「ご苦労様」と労りの言葉を贈った。




「そういや昨日、緒方らと帰ったんだってな」


「あ、そうそう。帰りにたまたま会ってね」


「愛しのたまちゃんと帰れて良かったですねぇ〜」




にやにやと茶化すように笑うカツ。


すると藍はその名前にぴたりと手を止めた。




「……いや、昨日は珠姫ちゃんいなかったよ」


「え?そーなん?」


「佐賀くんと用事があって帰ってた」





その言葉に、今度はカツがぴたりと手を止めた。


何気ない様子の藍をまじまじと見つめて、眉間にシワを寄せる。





「……え、たまちゃんって佐賀と上手くいってんの?」


「さあ……?でも仲は良いよね」





次々と藍の口へ運ばれていくカレーを目で追いながら、カツは少しだけ心配そうな表情を浮かべた。





「なんか……やっぱり普通だな」


「え?」


「お前だよ。……さすがにたまちゃんだし、もっと動揺したりすんのかと思ってたからさ」





そう言って再び食事を始めるカツを、藍は黙って見つめる。


そして眉を八の字に下げて少しだけ笑った。


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