爽やかくんの為せるワザ
* * *
「やべぇわまじで、腕の筋肉痛」
昼休み、食堂で昼食をとっていたカツと藍。
腕を揉みほぐしながら嘆くカツを、藍はカレーを頬張りながら見つめる。
「そんなに?大丈夫?」
「徹底的に重い物ばっか運ばされたからなぁ」
「店の手伝い大変だね」
家が定食屋を経営している為、カツは度々店の手伝いをしている。
それを知っている藍はそんなカツに「ご苦労様」と労りの言葉を贈った。
「そういや昨日、緒方らと帰ったんだってな」
「あ、そうそう。帰りにたまたま会ってね」
「愛しのたまちゃんと帰れて良かったですねぇ〜」
にやにやと茶化すように笑うカツ。
すると藍はその名前にぴたりと手を止めた。
「……いや、昨日は珠姫ちゃんいなかったよ」
「え?そーなん?」
「佐賀くんと用事があって帰ってた」
その言葉に、今度はカツがぴたりと手を止めた。
何気ない様子の藍をまじまじと見つめて、眉間にシワを寄せる。
「……え、たまちゃんって佐賀と上手くいってんの?」
「さあ……?でも仲は良いよね」
次々と藍の口へ運ばれていくカレーを目で追いながら、カツは少しだけ心配そうな表情を浮かべた。
「なんか……やっぱり普通だな」
「え?」
「お前だよ。……さすがにたまちゃんだし、もっと動揺したりすんのかと思ってたからさ」
そう言って再び食事を始めるカツを、藍は黙って見つめる。
そして眉を八の字に下げて少しだけ笑った。