爽やかくんの為せるワザ



「ね?だからさ……告白はもう少し待とうよ」


「緒方」




ふと、低いカツの声が教室に響いた。


カツに視線を向けると、いつになく真剣な表情を緒方に向けていて。


教室の空気がピリつく。




「お前……もしかして藍が好きなのか?」





……え。


驚いて再びカツを見るが、カツは変わらず真剣で。

本人の緒方は、目を見開いてぽかんとしていた。




「……は?何言ってんの?」


「藍のこと好きだからそんな取り乱して告白止めてんのか?」


「ち、違うんだけど。……私はただ……」




口ごもる緒方に、カツは「じゃあなんなんだよ」と更に迫った。



……緒方が俺のこと好きじゃないっていうのは、俺でも分かる。

カツも分かってたのかな?そこは分かんないけど。


緒方がこんなに必死になってるのは、何か別の理由があるんじゃないかな。




「……藍くんだって、たまが彼氏出来ない理由知ってるでしょ?」


「……うん」


「もし、藍くんが告白して……たまが拒否したら……怖いじゃん。そうならないと信じたいけどさ、もしもがあるじゃん」


「……それはそうだね」


「私はたまと藍くんが気まずくなったりして欲しくない。……皆で仲良くしてたいじゃん」





俯いて、ぽそぽそと小さな声を出す緒方は、本当に珍しいものだった。



……気まずく、か。

まあ……今のままじゃ確かに気まずくなるだろうな。


告白してもしなくても。



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