爽やかくんの為せるワザ
今。
私……今……告白された?
藍くんに?
え、藍くんが……私に?
「あはは、ごめんびっくりさせちゃって。
でも、嘘じゃないよ。ほんとに俺、珠姫ちゃんが好きなんだ」
「……」
「珠姫ちゃんってほんとに優しくて、人の為に動けて、可愛くて……すごく素敵だなって思ってる」
「……」
「人の悪口とか言わないし、一緒にいてすごく落ち着くんだよね。
珠姫ちゃんの笑顔見ると安心するし、もっと見たいなって思う」
「……」
「だから……俺と付き合って下さい」
どくどくと心臓がうるさい。
目の前にいる藍くんの言葉を聞くだけで、精一杯だった。
夢か現実か分からなくなるような。
思考がずっと停止してる。
「……珠姫ちゃん?」
何も話さない私に、藍くんが心配そうに尋ねてくれた。
……違う。
駄目。
駄目駄目駄目。
駄目だ。
私は藍くんと付き合えない。
駄目。
藍くんには私じゃない人が合ってる。
そう決めたばかりじゃないか。
……駄目だ。
「……わ、私っ……」
「うん?」
私の顔を覗き込む藍くんに、びくっと体が反応する。
私は俯いて、ぶんぶんと首を振った。
「……ごめんなさい!」
「え?た、珠姫ちゃん?」
私は藍くんの言葉を背中に聞きながら、走ってその場を後にした。
つまり、逃げ出した。
屋上から出ると、生徒が数人ドアの前に立っていて。
きょとんとしてこちらを見ていたが、私は構わず急いで階段を降りた。