爽やかくんの為せるワザ



「……」




ドリンクバーでコップにジュースを注いでくれている羽水くん。


私はそんな羽水くんの横顔を無言のまま見つめていた。




……な、何か話した方がいいかな。

でも特に共通の話題思い浮かばないし……。


例の件は、もし羽水くんが掘り返して欲しくない話題だったら悪いし……。



タイミングあれば話したいとか言ってたけど、いざとなると頭が回らないっ。






「足立すっげぇ歌上手いね」





と、


そんな私の胸中を察したかのように話題を振ってくれた羽水くん。


……た、助かった。




「…ね。かっこよすぎて惚れちゃう」


「なー、かっこいい」





柔らかく笑う羽水くん。

綺麗な横顔だな。



……ジュースを入れに行くのだって、きっと私1人じゃ大変そうだってすぐ気付いてくれたんだろうな。


私が気を遣わないように振舞ってくれるし。


無言の空気に耐えかねていた私の為に、私でも分かる話題を自然と振ってくれたり。


なんて良い人なんだろう。



……そんな人が、どうしていつも振られてしまうのかな……。





「成瀬さん」




羽水くんが不意に私の顔を覗き込んできた。


ぼーっとしてた私は驚いて「えっ!?」と1歩後ずさる。





「これ、この前のお礼」


「……え?」





そう言いながら、羽水くんはポケットから小さな可愛い箱を取り出した。



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