爽やかくんの為せるワザ




「珠姫は断りたくなかったから逃げたんじゃねぇの?」




ぐいっと私の顎を掴んで顔を近付ける沙羅ちゃん。

私は目を見開いて、真剣な沙羅ちゃんを見つめる。



……そうだ。

沙羅ちゃんの言う通りだ。



私……藍くんの為に告白を断ろうって思ってたのに、

逃げてしまった。


それは、自分の甘さが原因だ。


藍くんの告白を、断りたくないっていう気持ちを隠し切れなかった自分の甘さ。



……藍くんには他に良い人がいるって頭では思ってても、

信じたくないっていう気持ちがどうしても出てきてしまう。



それはやっぱり――




「ねぇ、たま……めちゃくちゃ藍くんのこと好きじゃん」



優しく微笑む桃ちゃん。



ほんとに


私、こんなに藍くんのこと好きだったんだ。



藍くんは他の人と……なんて、心から応援出来るわけない。




「たまは優し過ぎるんだよ」


「……あれ、桃怒ってないの?前、もっと時間置いた方がいいとか言ってたし、てっきり告白した羽水に怒ってんのかと思ったけど」


「あー……それ、私の勝手な事情だったの。

それでカツに怒られた」


「え、カツが?桃に怒ったん?」




沙羅ちゃんと桃ちゃんの会話に、私も驚く。


そうなんだ……。

あのカツくんが桃ちゃんに怒るなんて。


ちょっと想像出来ない。

意外だな。



「そう。……だからごめんね、たま」


「え……そんな、桃ちゃん何も悪くないよ……っ」


「ありがとう。なんかね、たまと藍くんって似てる気がする」



沙羅ちゃんに抱き締められたままの私の頭をぽんぽんと撫でる桃ちゃん。


< 170 / 311 >

この作品をシェア

pagetop